『マニュアルのないお店の、岡山への想い。』
BAZ-K(以下、B):もともとマルゴデリのスタッフだった平野さんがマルゴデリの代表になっていった経緯を教えて下さい。
平野(以下、平):もともとマルゴデリ1号店の田町店が始まる前は、倉敷にある丸五ゴムさんという地下足袋や靴のソウルを作っているゴム屋さんがここでお店をしていたんです。そのお店が営業をやめるタイミングで、NPOの方にこの場所を街の活性化に使えないかと持ちかけ、NPOの方から前社長に話が入り、だったらコーヒースタンドでもしようかということでこのお店が始まりました。ただコーヒーだとパンチ力がないので、岡山と言えばフルーツ王国だからという理由で、フレッシュジュースも始めました。最初は誰からも見向きもされなかったんですけど、イチゴの季節に某岡山の媒体でお店を取り上げられてから一気に人が押し掛けて来て、認知も上がったんです。それが最初の年で、僕は次の年からマルゴデリに入ったんですね。ちょうどお店がイチゴの季節の前に忙しくなるときだったんですけど、そのとき僕自身は仕事をしていなくて、いつものように行きつけのお店にいたら、そこにいきなり前社長がお店の前に来て、「今暇ならちょっとお店手伝ってくれない?」って言われて、「いいですよ!」って返事をしたら、「じゃあ今から!」と言われてそのままお店に入ったんです(笑)。
B:今まで飲食経験はあったんですか?
平:ドリンク業態は初めてで、カフェのカの字も知らなかったです(笑)。そんな状態でお店に入って、当時はクラブで遊んだり、ラップをしたりとお昼に動くことが無かったのでとまどいましたよ(笑)。それからちょうど2ヶ月ぐらい経った時に「店長をしてくれないか?」と言われて、そこからこのマルゴを仕切るようになって、それからロッツ店やクレド店が出来たりして、その辺りから事業部長になりマルゴ全店を見るようになりました。それからしばらくした28歳のときに、一度会社を止めて独立して、車アチコチ周りながら移動販売でドリンクを販売していました。
B:あのときは独立していたんですね!
平:そうなんですよ。岡山の某ショップを拠点にしながら県外にも行ったりして。
B:そのときの反響はどうだったんですか?
平:人との出会いはすごくおもしろかったですよ。単身で車に乗って県外に行くと、先方の人も初めてなので興味津々だったりして。そんなときに前社長から戻って来てくれないかと言われたんですね。当時経営がしんどくなってきていて、その時の自分もいつまで車で回れるかもわからないし、いいですよ!って軽い感じで戻ったんです(笑)。その時に前社長は会社を分けることを考えていたみたいで、当時は業績もよくなかったんですけど、「会社を分けてやってみ」と言われ、それがきっかけで会社を分けて独立したんです。
B:岡山県産の果物を使ったフレッシュジュースが特徴的なんですが、やっぱりこだわりはありますか?
平:『晴れの国おかやま』は日本でも有数のフルーツ王国なんですよ。イチゴ、白桃、ピオーネ、梨など季節を追って様々なフルーツが採れるし、日照時間も長いということから種類も多いんです。そんな岡山でフレッシュジュース屋さんをやる以上は、アピールにもなるし、それを触らない手はないだろうということで、岡山のフルーツを使っています。
当初はずっとコーヒースタンドです、っていうスタンスだったんですけど、雑誌で取り上げてもらったことで、一気にフレッシュジュースの人気が出たので、お客さんから見たニーズに合わせて、フレッシュジュースのもこれまで以上に力を入れていこうとなりました。なので最初は八百屋さんから果物を仕入れていたんですけど、今は完全に市場の仲卸屋さんからです。夜に注文を出して、翌朝に競りで落としてもらって、それをそのまま配送してもらっています。結構僕自身が味にこだわていて、バナナ1つでも、どこのブランドで、どこで育ったかなどひとつひとつ注文をしています。
B:今バナナなどマルゴで取り扱っている果物の特徴は何なんですか?
平:全店ではないですが、完全にオーガニックですね。市場も通さずに直接商社から買っています。オーガニックバナナって日本にはあまりなくてすごく珍しいんですね。というのも南国から持ってくる途中にどうしても虫が沸いてくるので、燻蒸というかなり強い煙の薬品をまいているんですね。普通に売っているバナナはそういった処理をしているバナナなんですが、うちのバナナはそういったことを一切しない有機栽培のバナナなんです。その他のフルーツは同じ手法のものがなかなかないんですけど、石関町店は特にオーガニックにこだわっているので、キウイとアボガドも同じオーガニックのものを使っています。
B:全店で行っているわけではないんですか?
平:砂糖以外の添加物を極力入れないフレッシュという基本コンセプトはもちろん全店共通なんですが、その中でも特化しているのが石関町店なんですね。石関町店は、料理に使っているスパイスやお米など手に入るものは全て有機のものを使っています。
B:その反面、有機にこだわるとコストも高くなりませんか?
平:ダントツで高いですね。ただ、フレッシュを売りにしたお店をやっている以上、コンセプトショップを持って、コンセプトをよりはっきり見せるべきなんですね。石関町店はその店舗なんです。確かに経営として全店舗を同じにするのは難しいんです。オーガニックって自然のもののはずなのに、不自然に高いので(笑)。なのでこだわりが強いお客様には是非、石関店店に行っていただきたいです。
B:確かにお客さんの層を見ても全店違いますもんね。
平:そうですね。この田町店でいうと一番ストリート寄りの店舗だしね。今まで働いているスタッフも代々そういった方が来てるしね。
B:ここは岡山でもメインストリートで、目印にもなるし、集合場所にもなりますもんね。
平:そうですね。だからこの場所は県外の方もおもしろがってくれるんですよ。
B:それこそ僕の知り合いが関東方面から来た時に、このお店を見てフレッシュジュースやりたいってなっていたし、県外のビジネスモデルにもなってるかもしれないですよね。それでいうと今後の店舗展開は岡山をベースにするのか、先ほど話に出ていた車での移動販売だったりと、どうなんでしょうか?
平:移動販売で言うと車で行うかはわからないけど、イベント出店用のキッドを作りたいです。それを持っていけばその場でお店が出店できるというようなもの。野外フェスだったり企業のイベントにも呼んでもらえるので、行った先で仮設感ではなくちゃんとしたお店としてやりたいので、今ちょうど考えています。ただそれは事業としてというより、フェスやイベントがみんな好きなので楽しむためにやりたいですね。あとは岡山の中でマルゴデリを増やしていこうという考えは今のところ強くは考えていないですね。
B:県外からのオファーはないんですか?
平:山ほどありますよ(笑)。でもほとんど断っています。
B:それは理由があるんですか?
平:一番の理由は、先ほども話た果物にこだわりを持っているので、それが県外に行ったときに、そのままのこだわりを続けるのが難しいんですね。それをフランチャイズ化するとそれなりのマニュアルも作らないといけない。そうなるとマルゴデリの良さって一気になくなってしまうんですよ。
マニュアルのない何とも言えない雰囲気が街に馴染んでいるひとつのポイントだと思っているんですね。
B:ローカル感って実際この場所に来ないと感じれないですもんね。今ではネットでもオーガニックのものが手に入る中で、マルゴさんの空気感やバイブスは現場でしかわからないですよね。
平:そうですね。そういったことがあるので、県外出店はいい話があれば、コンセプトをどこまで繋げていけるかを考えます。
B:それでいうと例えば北海道だとメロンがあったり、宮崎県ではマンゴーがあったり、その場所のフレッシュジュースも僕らとしては見てみたいんですけど、その辺りはどうなんでしょうか?
平:確かにおもしろいんですけど、それでいうと岡山のというよりは、行った地場の果物を使った、というぐらい打ち出しになるので、県外進出は大きくは掲げていないですね。でも逆に、広島や神戸などでやりたい!という自社のスタッフがいれば、コンセプトもきっちりつくれば、全然有りだち思っています。
B:それなら表現したいクオリティーやイズムが通っていますもんね。通常の出店オファーだと、マルゴが好きということではなく、商売目線でみられますもんで。
平:そうなんです。イオンさんなどでの店舗を見られると、お客様もたくさんいるので、いろなテナント関係者の方から商売としてやってくれと言われるんですけど、それでは一番最初のコンセプトの部分が無い状態になるので、収益はいいかもしれないけど、イメージはマイナス面も大きいと思うんです。
B:逆にそれだけローカルを大事に来たた中で、イオンや、さんすてに出店した理由は何だったんでしょうか?
平:倉敷でいうと、倉敷の中で商売する以上、ある程度のお客様が来る見込みを立てる中で、エリアでいうと、美観地区周辺かイオンモール倉敷しか目処が立たなかったんです。そんなときにイオンモール倉敷で、岡山の有名店を集めたイベントがあったんですね。そのときに結構目立つことが出来て、その後イオンモール倉敷さんからお声掛けをいただいたんです。イオンモールでの出店というと、周りはナショナルチェーン店がほとんどという環境で、その中に小さいうちの店が入って勝負をする。そんな中でどこまでやれるかを知りたかったのが1つあります。
B:イオンモール岡山での出店はどんな経緯があったんですか?
平:うちは今70人ぐらいスタッフがいるんですけど、イオンモール岡山が出来るとわかったときは、誰もが想像するように、路面店などの売上げは落ちると考えていました。そう考えると、こちらからの依頼はしなかったけど、イオンモール岡山からオファーがあれば断るという選択肢は無かったです。正直、ストリートの人たちは、イオンにお客さんを持っていかれてしまうという恐怖心はあったと思うんですね。そんな中でうちぐらいはイオンモール岡山に入り、売上げを上げ、それを
“岡山の街に還元しよう!”という地場だからこその想いはありました。
B:素晴らしい!考え方がストリートですね!!
平:これも計画した訳ではなく、たまたまだったですけど、これを出来るとしたら、ストリートにも根付きながら、大型のお店にも入っているうちのお店かなと思ったんです。なので、入らない選択肢は無かったんですけど、入る以上はそういった還元をしようという考えです。
B:そういった大きな目標の中で、岡山を盛り上げるために、それが今の出来る事なのか、それともまた別に考えがあるんですか?
平:それでいうと別の気持ちはあるんですけど、まだ何から始めるかが見えていないんです。岡山の街、ストリートを、飲食店発信で盛り上げる方法は何があるか、近年模索中です。
B:以前に少し話したときに、マップを作りたいと言われていましたよね。僕らも協力できることはしたいと思っていますよ!
平:そうそう!それはしたいんですよね。それこそ知っているショップばかりなので、そんな人たちみんなで作りたいんですよ。
B:今後の目標を教えて下さい。
平:さっきも話したんだけど、店舗展開をしてきている状態も、ちゃんとした経営的な計画というよりかは、本当に流れで今日まで来ているんです。なので、次はこんな大きい事業をしますというような目標はないんですが、実は1つやりたいのが、一番最初のルーツでもあったコーヒースタンド。うちの果物のこだわりと同じように、実はコーヒーのもすごいこだわりがあるんです。
B:そのこだわりというと?
平:まず使っている豆なんですけど、オープンした当初からやってくれているロースターさんがいるんですけど、その方がすごくコーヒーに対してのオタク気質な方で、その方たちがグループで海外から豆を買付けるんですね。その豆は品評会などでも上位にくるような豆なんです。最近よく耳にするようになったスペシャルティコーヒーももちろんスペシャルティコーヒーなんですが、その中でもトップクラスの豆を使っています。なので、かなりコーヒー通の方が飲むと、『え!?』ってなるんです。こんなお店の風貌で、こんなコーヒー飲めるの?というような感じで(笑)。通の方は結構知ってくれているんですけど、フレッシュジュースのイメージが強いので、未だにコーヒーを置いていることを知らない方もいます。なので原点に返ってコーヒーを前に出していきたいです。なので、今後は今は広島にいるロースターさんも岡山に呼んでしまって、ローストした豆をうちに来てくれるお客様が家で飲めるように販売したりしたいですね。で、ゆくゆくは郊外に大きな焙煎機を入れて、その焙煎している様子を見ながらコーヒーを飲めるような場所を作りたいと思っています。今のカフェという文化は、うちの母体のMarketができたときの岡山は数えるぐらいしかなかったんですね。そんなときからずっと同じクオリティとこだわりでやってきているので、もう一度コーヒーを根付かせたいですね。近々マルゴデリの名前でコーヒー専門店が出来るかもしれません。
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Guest
平野 裕治 Yuji Hirano
株式会社マルゴデリ代表取締役
Interviewer
BAZ-K
THE MANSIONオーナー
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