児島から、世界へ。

B:岡山県はデニム生産量が日本一と言われて いますが、これは歴史などの背景が絡んだ理由 があるんでしょうか?

岸本(以下、岸):もともとこの地区(児島)は 塩田だったんですね。塩田の後は農作物が育ち にくいんですけど、綿花は塩に強いことから綿 を始めたというのが、児島 の繊維産業が始まったきっ かけなんです。そのあとに 作業着などの縫製産業が盛 んになってきて、さらにカ バンなどに使う、帆布地と いう重いものも織れるよう に育ってきたんです。その重いものを織れる技 術と、縫う技術、そして備後地区ではインディ ゴの植物(藍)も育て始め、それらの技術が合 わさってジーパンが作れてきたんです。 

B:それから生産量日本一と言われる今に繋がっ てきたんですね。 岸:生産量もそうなんですけど、技術的な部分 でも岡山の児島は評価されてきていますね。


B:そんなデニムが出来るまでの流れを教えて いただけますか?

田淵(以下、田):弊社はもともと生地屋という こともあるので、何かものを作るときには生地 から作っていくパターンが多くて、この生地は どんな色落ちをするのかなどを考え、想像しな がら1つのものを企画していきます。なので一 番最初は生地からです。次にシルエットやデザ インを考え、その後に細かい縫製、という流れ になります。基本的にはワンウォッシュ、いわ ゆる加工をあまり加えない、シンプルなワン ウォッシュのものがラインナップとしては多い です。もちろんデニム全体を想像しながら作っていくんですけど、一番に生地を主きに置いて デニム作りを行っています。


 B:JAPAN BLUE JEANS の一番のこだわりは、 やはりその生地なんでしょうか? 

田:そうですね。やはりいい生地を作ろうと思 えば、どの綿を使うかなんですね。アフリカ産 の綿なのか、オーストラリア産、アメリカ産なのか。中でも桃太郎ジーンズはジンバブエコットンという海外の高級ドレスシャツに使われるような高級な綿を使っているんですけど、 やっぱりいい染色、いい色落ちをするためには、 白度がそれなりにあるものではないとキレイに 染まってくれないんです。普通はジンバブエコッ トンはデニムにはあまり使用しないんですけど、 やはりいいデニムを作ろうと思ったときに、ジ ンバブエコットンを取り入れました。 

B:その素材はどうやって発見したんですか? 

岸:もともとこういったジーパンを作りたいと いう想いがあって、それを紡績さんに相談して、 いろいろな綿を集めてもらい、検討した中で、一番希望に近かったものがこのジンバブエコッ トンだったんです。それから実際にデニムを作っ てみて、やっぱりジンバブエがいいねとなり、ジンバブエを採用し、今に至っています。


B:なるほど。では生地以外で、お2人が考える デニムの魅力は何なんでしょうか?

田:僕は、生地にも少しかぶってしまうんですが、 デニムはやはり色が落ちますよね。普通に考え れば、服や物などはなんでも、劣化するという ことはマイナスイメージですよね。 でもデニムはそのマイナスがプラスになる ので、そこが非常に面白いと思います。 岸:洋服って、買った瞬間がわくわくのピーク だと思うんですけど、デニムの場合は買ったと きよりも時間が経てば経つほど、わくわくがピークになるので、そういったものはなか なかないので、そういったところですね。 

B:ビンテージにしてもそういうところがたまら ないところですよね。やはりそういう経年経過 や味を楽しめるということが、一番伝えたいデ ニムの魅力なんですね。

田:そうですね。 


B:全く別ものということはわかっているんです けど、やっぱりファストファッションのように、安く手に入るものと、こういったデニムの価値の違いはどうすればよりわかって もらえると思いますか?もちろん金額的な差があるこ とはわかるんですが、その他の決定的な違いはあるんでしょうか?

田:例えば 1000 円未満でデニムを買えたりするなど、あくまで1つの窓口として、ファトファッション自体は全然いいと思うんで すね。今まであまりデニムを履いてなかった方 がデニムを履くきっかけになったりもすると思 いますし、もちろん中にはいるんですけど、多 くの人が最初から高級なデニムを買うのはなか なか手を出しづらい中で、そういうことがきっ かけになると思うんですね。そこから大抵の人 がもっといいものを履きたいと思うようになる と思うんですが、そんなときに如何に自分た ちがファストファッションで手に入るデニ ムよりも魅力的なデニムを作れるかは常に 考えています。 

B:そういう段階もある程度考えて価格設定など もされているんですね。 

田:そうですね。弊社には4つブランドがある んですけど、その中でも価格設定を分けていま す。例 え ば、JAPAN BLUE JEANS で あ れ ば、 12,000 円から 13,000 円をメインにして、桃太郎ジーンズであれば 20,000 円からなどにしてい ます。

 B:ある程度ターゲットとする年齢層も分けられ ているんですか? 

岸:やはり上代が違うので、若い方は安いほう を選ばれたりすることは多いですね。でも 12,000 円のものであれば年配の方も買っていか れますし、はっきりとした分かれ方はしていな いですが、大雑把には分かれていますね。 

B:桃太郎ジーンズと JAPAN BLUE JEANS の 違いは価格帯だけなんでしょうか?

 田:生地へのこだわりは両ブランド同じなんで すが、桃太郎ジーンズは少しビンテージ寄りの テイストで、ビンテージが好きな方や、マニア 層に向けていて、JAPAN BLUE JEANS は、も う少しファッションに寄せていて、例えば、ス キニーや、テーパードが少しきつめであったり、 加工物があったりなどのデニムですね。そういっ た部分でマーケットや消費者を分けています。

 B:消費者の男女割合はどれぐらいなんですか? 田:桃太郎ジーンズは、9対1でほぼメンズで すね。

岸:JAPAN BLUE JEANS でいうと、7対3で 7割がメンズですね。

B:JAPAN BLUE さんは海外展開もされていると思うんですけど、消費者、生産者の両側面で、 日本との違いはありますか?

岸:生産者に関して言うと、海外はどれだけ安く、たくさん作るかということしかないですね。 

田:合理化的な考え方ですね。

 岸:どれだけ大きい工場を作って、機械をどれだけ早く動かしてということを求めている工場 しかないので、逆に色落ちのいいデニムを作ろ うだったり、面白いデニムを作ろうという工場 は聞いたことがないですね。

B:消費者はどうなんでしょうか? 

岸:消費者もそういった方が大半なんでしょうけど、中には色落ちが好きな方もじわじわ増え て来ていますね。 

田:少しずつですけど、そういった人たちが海外でブランドを立ち上げ、自分達でやってたり していて、最初は2、3人でやっているんです けど、やっぱりいいものを作りたくて、わざわ ざ児島まで来たりしています。そこで楽しくて 1日中工場を見てたりするんですけど、アテン ドが大変です(笑)。なので自分達もいざ、商品を持っていくときには、海外でも少しずついいものを作ろうという考え方が生まれてきている ので、マーケットとしては今後広がるかなと思っています。 

B:ちなみに海外はどこが盛んなんですか? 

岸:ドイツ、アメリカ、東南アジアなどですね。 

B:その中でもそういった考えを持っている方は 全体の何割ぐらいなんですか? 田:言っても1割未満ぐらいですかね。 

B:それは意外ですね!もっとシェアしていると 思っていました。 

田:逆を言えば、もっと育てられるマーケットだなと思っていますね。


B:今後、JAPAN BLUE として新たに取り組 んでいきたいことはありますか?

田:今後は、もっと海外をシェアできると思っているので、まずは自分達がやっ ていることを理解してもら うことですね。つい最近も アメリカを一周してきたん ですけど、実際に弊社は展 示会にでるだけではなく、1件1件いわゆる 業者のようにお店に訪問しているんですね。

岸:やっぱりデニムって、ぱっと見せるだけではなく、いろいろ説明しながら回っていかない とわかってもらえないんです。 

B:そうですよね。最初海外の人からすると、なんでこんなに高いの?ってなりますもんね。でも履いて使ってもらうことで、その良さはわかってもらえるものなんですか? 

田:口で説明するよりは早い場合もありますね。 まずはオーナーやバイヤーからファンにしてい かないといけないんですね。 

B:ファンにさせる秘訣は何なんですか?

岸:やっぱり作り手の想いですね。それを伝えていきながら、理解してもらうことですね。 

B:でもそういった試みをしているのは、日本の企業を含め、何社もあるのではないですか? 

田:ただ、1件1件歩いて回っているスタイル はおそらく日本だけで見るとうち以外は誰もし ていないですね。例えばニューヨークの展示会 のついでにちょろっと行く企業の方はいると思 うんですけど、このためだけに海外を飛び回る 企業はないと思いますね。

B:では今後は海外が主要になってくるんでしょ うか?

田:国内も全然まだまだやっていきます。やっぱり国内でそれなりの知名度がついてきたので、 ある程度海外もやりやすかったという部分が あったので。というのが日本のマーケットって 海外の方からするとすごい難しいらしいんです ね。何故かというと日本自体にオリジナルブラ ンドが無数にあって、かつ海外からもいっぱい入っているし。 

B:そういう意味では海外って大手企業は数多く ありますけど、それ以外はあまりないですよね。 

田:本屋さんに行けば一発でわかりますね。 ファッション紙は日本が一番多いんですよ。

B:確かに!日本のサブカルがオタク気質なとこ ろがありますもんね。

B:では国内もターゲットにしつつ、海外も進出 して、何か新しくやっていきたいことなどはあ りますか?

田:ちょうど去年に弊社は、生地屋のコレクト という会社と、製品事業部の藍布屋を合併させ て、株式会社ジャパンブルーを設立したんです。 児島にはいっぱい同業者があるんですけど、縫製は縫製、加工は加工、仕上げは仕上げだけなど、 基本的に分業制なんですね。そんな中で弊社は 生地はあるし、工場もあるし、販売も行ってい るし、いえば1~10まで出来る会社なんです。

なかなか児島でもそういった会社は少なくて、 そういった意味で、もっと自社をアピールして いって、どんどん日本に海外の方も来てもらい、

この児島という地域自体を盛り上げていきたいと思っています。 やはり街が盛り上がれば、この産業ももっと活 性化していくと思いますし、逆にこの産業がもっ と盛り上がれば、児島の街ももっと活性化する と思うんです。


B:実際に最近の児島はどうですか?

田:最近でいうと、一時に比べればどんどん児 島に来る方は増えてきていますね。それこそ海 外の方なんかは大阪にホテルを取って、児島まで来られたりしているので。

B:ではマーケットとしては今後は世界的にやっ ていくんでしょうか? 

田:そうですね。ブランドも会社も大きく売り 出していきたいですね。 

B:今後新しく考えるラインはあったりするんで すか?

岸:JAPAN BLUE JEANS としては、今レ ディースラインをやって いて、そのラインをもう少 ししっかり確立してやって いこうと考えています。昔は男性ばかりの職場 だったんですけど、今では女性も多く入っても らって、体制も整ってきているんです。 

B:なるほど。ではそれぞれのブランドでも新たなものを作りながら、会社としては世界的に発信しながらも、日本の方はもちろん海外の人を 児島に受け入れ、児島を盛り上げていこうということなんですね。


++++++++++++++++++++++++++

✳︎Guest

岸本 裕樹 

株式会社ジャパンブルー ジャパンブルージーンズ事業部長

✳︎Guest

田淵 達士 

株式会社ジャパンブルー  桃太郎ジーンズ事業部岡山本部長

✳︎Interviewer

BAZ-K

THE MANSIONオーナー

++++++++++++++++++++++++++

0コメント

  • 1000 / 1000